集中治療室で働く上で、患者さんを安全に看護して、そして急変や突然の事態にもパパッと対処できるようになりたい。
大切なのは勤務が始まってから行う患者と患者周辺の環境チェックです。
これを私の病院では「始業時点検」と呼んでいます。
新人時代は始業時点検の重要性に意外と気づけないものです。
今回は始業時点検とは何か、また効率よく始業時点検を行って安全に1日が過ごせつようにするコツをお伝えします。
始業時点検とは
先ほども説明しましたが、始業時点検とはなんでしょうか??
始業時点検が患者さんを安全に看るためのスタートであり、急変時の対応にも、その予防にも効果的です。
集中治療室では特に重要になる作業ですが、決して一般病棟は関係ないということではありません。
始業時点検では、
1.患者さんの全身状態の確認
2.患者さんに挿入されている挿入物の確認
3.使用されている機器の作動や設定確認
4.患者さんや家族との基本的なコミュニケーションの場
等を確認します。
これをしっかり行うことで、患者周辺状況を把握し、より安全に安心に業務が行えるようになります。
始業時点検の重要性
軽く説明してしまいましたが、始業時点検は看護師が業務を行う上で非常に重要なことです。
患者さんと患者さんに繋がれている機器や薬、挿入物の確認だけでなく、始業時点検をすることで患者さんの重要な観察項目の再確認と注意点などのおさらいにもなります。
集中治療室ではハイリスクの患者さんがたくさんいるため、必然的に医療機器や薬、挿入物などは増える傾向にあります。
しかし一般病棟であっても、常に患者さんにはなんらかにリスクが隠れていますし、しっかり確認を行うことでより安全に業務や看護をこなしていけることに間違いはありません。
くどくなりましたが、始業時点検をすることで、
インシデントの予防
急変や事故の予防や察知
患者の全体像把握
ができるため、しっかりやっておくことで必ず医療者、患者さんともに安全で安心に1日を過ごすことができます。
具体的な始業時点検の方法
では具体的な始業時点検の方法について、私なりの考えも含めてお伝えして行きます。
患者さんや家族との基本的なコミュニケーションの場
まずは基本中の基本、挨拶です。
挨拶をすることで、患者さんに「今日の受け持ちをしてくれるのはこの人だ」と認識してもらうことも大切です。
ここで私は患者さん確認と、意識レベルの確認、せん妄の有無などを同時に確認しています。
患者、家族への丁寧な対応は患者、家族の不安の軽減につながることなので、非常に大切です。
実際に、患者、家族へアンケートをとったとこもありますが、やはり丁寧な対応と挨拶で安心されたという声はいつもアンケート結果として集計されます。
また既往歴や情報収集の段階で認知症やせん妄のリスク、または発症している可能性があることがわかっていても、看護師としては実際にその状況に触れてみないとその患者さんの状態は把握できません。
認知症やせん妄も、その人によって対応が変わりますし、潜在化していることも多いです。
せん妄の予兆を察知したりすることにもコミュニケーションは非常に重要です。
患者さんの全身状態の確認
挨拶も済ませた後は早速全身状態の観察に入ります。
血圧や体温などのバイタルサインはもちろん、呼吸状態や見た目も重要です。
sickな状態か、fineな状態かも皮膚に触れたり、直接見ることでわかる情報も多いので、血圧と体温や呼吸数など見て全身状態の観察を終えてしまわないようにしましょう。
全身状態が悪い人は肌に触れるだけでわかったりするものです。
肌がじっとり冷汗をかいているような状態や、実際に触って見てかなり熱いことがわかったり、触った箇所に痛みがあったりなど触らないとわからないこともたくさんあります。
触れること自体にも患者さんへの不安の軽減にもつながると言われています。
患者さんに挿入されている挿入物の確認
挿入物の確認も非常に重要です。
刺入部が感染したり痛みを伴っていないか
挿入物が抜けかけたりしていないか
挿入物の固定がはがれかけていないか
挿入物の導線が絡まったり引っかかったりしていないか
などしっかりチェックしましょう。
挿入物に伴うトラブルは非常に多いので必ずしっかり確認しておくべきです。
ここで確認を怠ってしまったために、ラインなどが抜けてしまい再挿入に時間を取られるなんてこともざらにありますので、必ず確認しましょう。
どこにどのラインが入っているか認識しておくことで、急変時の対応にも差が出ます。
緊急でIVしないといけない薬が出ても、すぐに指示が出せることは自分にとっても、IVする側にとってもとてもメリットになります。
また抜けると命の危険につながる管も集中治療室ではたくさん管理しています。
使用されている機器の作動や設定確認
使用されている機器がクリティカルなものであればあるほど、基本的には点検表などがあったりするので必ずチェックすることになるとは思います。
しかし点検表を用いない医療機器もたくさんあります。
施設や病院によって違いはあると思いますが、点検票があろうがなかろうが、基本的には医療機器は全て確認しておくべきです。
「前の勤務帯の人がちゃんと見てくれてただろうから・・・」
「ベテランナースが受け持ちしてたから大丈夫だろう・・・」
自分で点検して見ると意外に確認がしっかりされていなかったり、設定が少しおかしなことになっていたり、はたまた、知らない間に医師が設定を変えてしまっていたりするので、必ず確認しましょう。
投与されている薬剤の確認
投与されている薬もインシデントやアクシデントの元になりやすいので密なチェックが必要となります。
チェックの際には、
投与速度
配合変化
薬の残量
など確認しておくことが大切です。
ガンマ計算のミスはよく起こるインシデントです。
誰もがいい加減に対応していたために2日ぐらいガンマ計算が間違ったまま経過していた事例も聞いたことがあります。
また無くなりそうな薬や、どれくらいの時間に薬の交換になりそうか把握しておくことも業務を回していく上で大切ですね。
効率のいい始業時点検の方法
始業時点検をしっかり行うことは非常に重要ですが、しっかりと実施しすぎることで
なんて怒られていませんか??
始業時点検をより確実に早くこなせるようになることは、様々な業務を円滑に行っていく上で非常に重要になりますので、効率のいい点検方法についても記載して行きます。
患者にとって何が重要かを理解する
患者さんによって大切なポイントは違います。
例えば、
「下肢動脈の血流を改善させる手術をした人の下肢の温度や脈が触れるかどうかを見ることが非常にその患者には重要ですが、肺がんの患者さんに同じことをみっちり観察する必要があるか」
と言われれば答えはNOになります。
患者さんによって見るポイントが変わってきますので、全部を全部、100%見るのではなく、大切なところを取捨選択して情報をとることができれば、非常に始業時点検が早くなります。
動線は短く
始業時点検を始める際に、
右に行ったり左に行ったりすること
部屋を出たのに何か観察するのを忘れてしまってまた部屋に戻るを繰り返す
等のことがあればもちろん作業はどんどん遅くなります。
一度部屋に入って、出てきたら、チェックが全て終わっているようにできれば相当時間短縮になります。
メモをしよう
人は本当にすぐに忘れてしまう生き物です。
点滴の挿入部位、速度、医療機器の設定、体温や血圧など、メモできるものは簡単にメモを取りましょう。
メモをとる時間が多少かかるかもしれませんが、結果的に早くなることが多いと私は感じています。
意識して働くこと
大切なことは上記の内容を日頃から意識できるかどうかだと思います。
やはり考えなしに仕事をしていてはいつまで立っても上達もしません。
なぜできなかったのか、逆に何がよかったのかしっかり自分で振り返ることを続けることで着実に力はついて行きます。
今までお伝えしたきた内容を意識して動くことを忘れず、日々の業務に生かして頂ければと思います。
エラー: コンタクトフォームが見つかりません。