看護師の中でも救急系や集中治療室の看護師は、より重症な患者を看ることが多いのはどこの施設も同じだと思います。
集中治療室看護師として働く期間が長くなり、慣れてくると、知らず知らずのうちに「看護の視点」がずれてきてしまう人がいると思います。
集中治療室の看護に限定されるわけではありませんが、今回は現役の集中治療室看護師の声として長く働いていると忘れがちな初心について焦点を当てて考えてみます。
看護師の役割
看護師は現場では様々な役割を担っていますが、法律上では
「看護師」とは、厚生労働大臣の免許を受けて、傷病者若しくは褥婦に対する療養上の世話又は診療の補助を行うことを業とする者をいう。
引用:保健師助産師看護師法 第5条
とされています。
「療養上の世話」と「診療の補助」と簡単にまとめられていますが、実際には看護師の役割は多岐に渡ります。
清拭や洗髪、投薬など看護学生の時から学んできた基礎看護技術はもちろん、グレーゾーンの部分はあると思いますが緊急時に看護師の判断で投薬したり、動脈採血をしたりする病院もあります。
先日看護学生が実習に来て、学生さんと接することで忘れかけていた初心を思い出した気がします。
自身が看護学生の時、
「患者さんの安全・安楽をいかに考えるか」
をよく考え、勉強しました。
外科であれば、リハビリ前の創部痛予防にリハビリ開始1~2時間程前から痛み止めを予防的に内服してもらう。
認知症の患者さんにリアリティオリエンテーションを行い、今どこで何をしているのかそばにいる看護師が患者さんを優しく導いてあげる。
不安が強い患者さんの不安の内容を傾聴し、一緒にどうすれば少しでも楽になるか考える。
患者さんだけでなく、周りを取り巻く家族がしっかり休めているか、不安や今後のことが気になっていないか傾聴し、社会調整や多職種との連携の架け橋になる。
上記だけでなく看護師って本当にいろんな役割があると思います。
実習生の思い
先日関わった学生さんから、
「辛そうにしている患者さんに声がかけられなかった。」
「術後にしんどそうにしている姿をみて自分には何もできないと感じた」
と言われ、相談されました。
そばにいるだけで不安の解消になる患者さんもいるかもしれません。
手を触れるだけで痛みが和らぐ人もいるかもしれません。
頑張っていることをねぎらうだけで、少しでも気持ちが前をむくかもしれません。
学生は何か患者にしないと学びがないと思ってしまいがちですが、決してそうではないと思います。
実習中にはあまり深く関われなくても、うまく関わっている看護師の後ろ姿を見るだけでも学生の今後の看護師人生の大きな一歩になると思います。
現場の雰囲気を味わう事、ケアを看護師と一緒に経験するだけでも大きな学びです。
看護師して長く働くようになると、業務に追われたりしてこう言ったことを考えることが少しずつ減ってしまうこともあると感じます。
集中治療室の看護師
一転、現場の看護師として働きだして気づいたことがあります。
気管挿管をされて話ができない患者さん。
薬や生命維持装置がないと今にも命が途絶えてしまうような状態です。
血圧が下がったから昇圧剤を使おう。
酸素化が悪くなったから呼吸器の設定を調整してもらう。
痰が溜まって酸素化が少し悪くなったら口や鼻から吸引しよう。
業務が忙しいし、午前の早いうちにさっさと身体を拭いてしまおう。
気づけばいつの間にか、
「患者さん」
ではなく
患者さんの「病態・状態」、または「業務」
に視点が行ってしまったなと思います。
患者さんの視点に立って、意識があろうとなかろうと、いかに苦痛が少なくなるなるようような関わりができるか。
集中治療を必要とする患者さんたちには必ず押さえておきたい内容だと思います。
酸素化がよくないし痰も多そうだからとりあえず吸引しよう。
ではなく、
聴診器を胸にあて、呼吸音を聴取し、患者さんに状態を説明し、体位ドレナージをするだけでも痰がきれいにとれることがあります。
色んな日々の行為を一度患者さんの立場になって考え、立ち止まることも必要かなと思いました。
患者が中心
看護師の仕事は患者さんがいないと成り立ちません。
患者さんのQOLの向上や、生きがいの獲得、苦痛の軽減は、看護師の少しの意識の変化だけでも得られることもあるのではないかと思います。
特に集中治療室では話すことができなかったり、疾患によって自身の意思を伝えられない人が多くいます。
家族も患者と同じようにたくさん不安を抱えています。
そのような人たちにも、話ができる患者さんと同様のケアの質を、患者を人としてみる視点を大切にして関わっていくことが改めて大切であると、実習生の初々しい姿を見て思い出しました。
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